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取り壊し現場に潜入 渋谷・桜丘町大規模再開発、「最期」の姿を写真特集

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渋谷・桜丘エリアの約2.6ヘクタールの敷地を一体的に整備する大規模再開発「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」の工事現場が4月10日、報道陣らに公開された。

昨秋まで常連客らが話に花を咲かせた大衆居酒屋や老舗ジャズ喫茶などが店を構えたビルも取り壊しが進み、桜丘町から代官山町に抜ける幅員15メートルの道路「補助線街路第18号線」の「骨格」がすでに姿を現し始めていた。

外壁が取り払われ内部があらわになるビルがある一方で、多くの人に親しまれた店の看板は辛うじて姿を残している箇所もあり、人の営みが一時的に無くなった工事真っただ中の囲いの中。2023年度をめどに、今後新たな街が形成されていく同地区の「最期」の姿を、未来図も併せて写真特集。

雨が降る中、囲いの中へ 「見学会」出発

渋谷駅直上の高層複合施設「渋谷スクランブルスクエア東棟」など、渋谷駅周辺で年内に開業する再開発プロジェクトの開業月などが明らかにされた記者発表の一環で行われた、桜丘町・工事現場での「見学会」。雨が降る中、通常は入ることのできない囲いの中の様子を写真や映像に収めようと、多くの報道陣が会見場から現場へと向かった。すでに住民や通行人などもいないかつての街には、重機の音が響き、所々でビルの骨組みなどが露出。非日常の世界が広がっていた。

取材は2班に分けて行われ、報道陣らは関係車両なども出入りする、国道246号線から一本入った桜通り沿いの出入り口部分から、ヘルメットを着用し現場に入った。各班に誘導員2人が帯同し、パネルを掲げるなどして解説、誘導しながら現場を案内した。

報道陣が最初に案内された現場。すでに多くの建物が跡形も無くなっていた

初めに目の前に開けたのは、すでに建物が取り壊されて仮舗装され、パイロンとロープで道のようなものも造られた「III地区」。かつてあった老舗青果店「高野商店」や雑居ビルなどは跡形も無くなり、代わりに、今後この場所に整備されるとみられる補助線街路第18号線の土台が着々と造られているようだ。

取り壊し中のビルも。写真右手前は、かつて「崖の上のヤマハ」とも称された旧「渋谷エピキュラス」

現場では至る所で重機により取り壊し・撤去作業が進む

【過去画像】取り壊し前の街の様子。写真の真ん中から左部分にある建物はすでに取り壊されている(2018年7月撮影)

【過去画像】桜丘町で約70年にわたり営業を続けてきた「高野商店」(2018年10月撮影)

人気店の看板や壁の寄せ書きも 取り壊し目前の街の記憶

報道陣が現場に入った4月10日時点では、駅近くの比較的大きなビルなどはまだ足場などに覆われているものの、外壁や看板もそのまま残されている箇所が多く見られた。中には、昨年10月の閉店時に長蛇の列ができた老舗立ち飲み店「富士屋本店」の看板も。工事で外壁が取り払われ偶然見ることができたビルの壁面には、ヒット映画「Shall we ダンス?」の周防正行監督も「生徒」に名を連ねた「玉井ダンス教室」の寄せ書きもあった。

「富士屋本店」の看板。半年前にはこの看板の前に、閉店を惜しむ人の長蛇の列ができていた

ジャズ喫茶ブーム全盛期にオープンした「メアリージェーン」は看板が取り外されていた

【過去画像】営業時の「メアリージェーン」の入り口(2018年10月撮影)

常連客も多い老舗店が軒を連ねた道。写真右奥のビルには釣り具店「上州屋渋谷店」があった

「Shall we ダンス?」のモデルともされるダンス教室の壁面には「ありがとう」などの寄せ書きが(写真左はビル俯瞰)

次の現場に移動 民家が消え視界が開ける「非日常」空間に

報道陣が次に案内された現場は、最初の現場から東に移動し、二股の道を左に入り鶯谷方面に向かう道の途中。かつては古い瓦屋根の民家や、レトロモダンな木造アパート「ジュネス順心」、独立系カフェなどが軒を連ねた住宅街。すでに民家の面影は無く、比較的大きなビルを残すのみ。かつては建物で見えなかった北側のJR線も、取り壊されたビルの隙間から見ることができ、再開発地一帯が見渡せるようになっていた。

案内された2つ目の現場。左手に再開発エリアが広がり、右手には味わいのある古い石垣が残されていた

解体中のビル2階に「トマソン」発見。ダイビングショップの看板が掲げられている

【過去画像】道の「入り口」部分に店を構えていた居酒屋「さくら亭」。工事現場では跡形も無くなっていた(2018年7月撮影)

【過去画像】渋谷駅至近にもかかわらず、喧噪(けんそう)を感じさせない空間が広がっていた(2018年7月撮影)

「ガラパゴス」からアクセス向上へ 「取り残されない街」に

駅南西部の広大な敷地で東急不動産が地権者・事業協力者と共に進める再開発事業には、「昭和」の古き良き面影も残していた街が姿を消すことに惜しむ声なども聞かれるが、これまで渋谷の他エリアのようなにぎわいからは分断されてきた桜丘町にとって、「ガラパゴス」からの脱却は住民たちが望んできたことでもある。

かつて住宅が多かった桜丘町の風景が大きく変わったのは、1964(昭和39)年の東京オリンピック開催に伴い国道246号線(以下、246)が開通してから。幹線道路が駅と街とのスムーズな動線を遮り、ガラパゴス化したことで、急速な開発の波から守られてきたともいえる。

駅と街を隔てる国道246号線。写真右側一帯の再開発エリアとつながるデッキ(中央)も整備される

2014年6月に東京都が都市計画を決定した再開発では、補助線街路第18号線などのインフラ整備を含め、2023年度をめどに事務所や店舗、住宅、生活支援施設などが入る4棟を建設する計画だ。これまで街の明暗に大きな影響を及ぼしていた駅との分断は、再開発による飛躍的なアクセス向上で、街の風景だけでなく人の流れも一変させる。

計画では、地区玄関口のランドマークとして、駅と街、地下と地上を簡便に結び付ける縦の歩行者動線「アーバン・コア」を整備。さらに、渋谷駅西口歩道橋を拡幅し架け替え、246を南北方向に渡れるデッキを中心に、JR線の頭上を東西方向に横断する東西通路も開通。駅や渋谷ストリーム(駅南街区)との動線を確保する。

今回取材に入った取り壊しが進む現場から望めたJRの線路。線路越しには昨年9月に開業した高層複合施設「渋谷ストリーム」がそびえ、よく見るとデッキの一部のようなものもすでに存在する。駅東口の渋谷ストリーム開発に当たっても、「渋谷駅東口歩道橋」の大掛かりな架け替え工事が行われ、駅とのアクセスは向上した。西口でも同様に現在の歩道橋が架け替えられ、さらにJRの線路上をまたぎ桜丘地区と渋谷ストリームをつなぐデッキが整備される。

現在、東西に街を分断しているJR線の上をまたぐ新デッキが南北に整備される(画像提供=東京急行電鉄)

再開発の完成を前に、周辺地区と連携し先行して整備されるのが、地下と地上、地上とその上の階を縦方向につなぐ立体的な歩行者動線「アーバン・コア」。都市計画道路や、地下空間を有効に活用する地下車路ネットワークも整備し、渋滞や混雑など従来の渋谷駅周辺が抱える交通網の課題にも対処。一連の大規模なインフラ整備がガラパゴスからの脱却の鍵を握るのが、この再開発計画の大きな特徴でもある。

渋谷駅桜丘口地区。西口国道デッキよりA1棟を望む(画像提供=東急不動産)

桜丘地区周辺に広がる丘陵地と渋谷駅をバリアフリーアクセスでつなぎ、地形の高低差や鉄道・幹線道路による地域の分断を解消することは、代官山・恵比寿方面とのアクセス向上も生むと、住民らは期待する。

渋谷駅桜丘口地区 補助第18号線沿いA街区外観のイメージ(画像提供=東急不動産)

かつての街の記憶と、新たな街へと変貌する未来への片鱗が混在する、今しかない街の姿を、しっかりと目に焼き付けておきたい。

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