特集

もはや「ピアッシング」は親公認?!
裾野が広がる10代ピアス事情

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■10代客の7割が「耳たぶ」。男子は1つ、女子は2~3つ?!

渋谷駅ハチ公口から丸井ジャム方面に徒歩3分、丸井シティの向かい側に位置する美容外科「渋谷整形」は、美容整形をメインにピアッシングも行っている。同医院でチーフを務める栗原さんに話を聞いた。「場所柄、ピアッシング客の中でも10代客が最も多く、全体の約7割になる。男女比は6対4で女子のほうが多い」という。1年の中でも特に、学校が長期休暇に入る春休みは、ピアスホールを開けに来る10代客が一番多い時期だそうだ。中学を卒業してピアス禁止の校則から開放されたという子や、校則で禁止されていても休暇中に穴が完成すれば、学校へはピアスを外して行けるから、という子など、10代の場合はピアスを開ける背景に校則の事情がつきまとっている。

10代のピアッシングの傾向について栗原さんは「10代客のうち約7割は『耳たぶ』に穴を開ける。男子は片耳に1つ、女子は2~3つが一般的」とのこと。女子の場合は奇数の方が運気が良くなる、という子もいれば、偶数の方がいいといった噂を信じている子もいて、その真相は不明だそうだ。男子の場合は右耳にピアスをするのはゲイの印、という噂が一般的で、大抵の子は左耳に開けるという。「カップルの場合は男子が左耳に1つ、女子が右耳に1つ開け、ペアのピアスをしたりする傾向もあるようだ」と栗原さん。こうしたカップルは、彼氏、彼女の誕生日やクリスマスなどの記念日に来院することが多い。また、クラブ活動帰りに5、6人の集団で訪れる女子高生も多く、付き添いで来たはずの子がノリで突如ピアスを開けていく光景もしばしば見受けられるという。

同医院に勤めて6年になる栗原さんは、昔と今の違いについて「ボディピアスの人気が高まっている」ことを挙げる。「耳たぶ」以外に人気の箇所は「耳軟骨」と、女子の場合は「へそ」だという。栗原さんは「へそピアスはモデルや芸能人、外国人アーティストの影響などが大きく、中でもブリトニー・スピアーズの名前はよく耳にする」という。耳軟骨に開ける女子の場合は、「校則でピアスを禁止されている場合、耳の上部の軟骨部分なら髪の毛で隠せるから、という理由も少なくない」(栗原さん)とのこと。10代がピアスを開ける動機についてはファッション性が一番で、「今はピアスをしているのが普通、といった傾向もある。友達がみんな開けているから、と言う子も多い」(栗原さん)とのこと。10代の親世代である現在40代の人々にとっても、ピアスは一般的だという認識が増えてきているようで、中には10代の娘がピアッシングしたことに影響を受けて、母親や父親までもが後から来院するケースもあるという。

渋谷整形
渋谷整形 渋谷整形・施術

■耳以外での人気は女子が「へそ」、男子は「ラブレット(唇)」?!

センター街奥に位置する「NOON(ヌーン)」(TEL 03-3464-8994)は、渋谷で日本発の専門店として1989年にオープンしたボディピアッシング専門店。同店オーナーであり、ボディピアスの第一人者としても知られる間宮英三さんに、10代のピアス事情について話を聞いた。「当店では18歳以下の場合、保護者同伴でないとピアッシングをしないため、18歳、19歳の客は全体の3割程度だろう」と間宮さんは話す。ピアスに「はまる」年代には波があるそうで、現在増えつつあるのは25歳から30代の女性だという。間宮さんによると、「当店の奥まった立地条件と、一切広告をしない宣伝方針の関係で、顧客はほとんどが口コミ。男性はあまり口コミをしないため、7対3の割合で女性客が多い」そうだ。

10代客は、主に専門学校生やフリーターの客が多いという。特に、男女共ロックバンドなど何らかの音楽活動をしている子が目立つそうだ。ハイ・ティーンに人気があるピアスホールの場所について聞くと、間宮さんは「男女共に1番は耳。中でも軟骨にピアッシングする子が多い。その次は女子ならへそ、タン(舌)の順、男子は2番がラブレット(下唇の下の中央位置)、3番はノストリル(小鼻)」と答える。10代客の傾向としては、「ピアス・ファンは圧倒的に女子が多い」と間宮さんは言う。女子の場合、ピアッシングの際の痛みを考えていない子が多く、どこにピアスを開けたいかという明確な希望をもって来店するケースがほとんどだそうだ。それに比べて男子は「どこに開けるのが痛くないか」と聞いてから開ける場所を決める傾向が強いという。また、母娘で来店するケースも増えつつあり、「先日も、40代の女性が小学校4年生の娘を連れて2人で耳にピアッシングしていった」(間宮さん)そうだ。中学校、高校へ入ると学校の規制が厳しくなるため、友達の影響を受け、安全ピンや画鋲などで自ら穴を開けてしまう子も多い。そのため、規制のないうちに安全な場所で開け、傷が完治してしまえば学校にいる間はピアスをしていなくても塞がらないから安心、という親心が働くらしい。

1991年頃、日本でもボディピアスが流行し始め、現在ではピアスもかなり一般的となった。間宮さんは「昔は人のやっていそうにない場所に開けたがる人が多かったが、現在は人がピアスをしているのを見て、女子なら『カワイイ』、男子なら『カッコイイ』と影響を受けてピアスを開けに来る子が多い」と話す。女子の場合は、髪型を替えるのと同じような感覚で、気分転換にピアスを開けるケースも多い。しかし、中には数を多く開けることに執着してしまう子もいるそうだ。「ピアスホールをたくさん開けたがる子は、自分を特殊な人間に見せたいという願望があるのだろう。もしくは、穴を開けることは人によっては中毒性があるため、ファッションとしてではなくピアッシング行為自体にはまってしまっている場合もある」と、間宮さんは解説する。

ボディピアスは開けられる場所が決まっており、体の安全性を第一に考えると材質やデザインにも制約が生じる。ところが「今の若い人たちはピアスが一般化している弊害として、間違った知識を持っている子も少なくない。アクセサリー業界の中には、明らかに体の安全性を無視した材質、形状、デザインのボディピアスを販売しているメーカーもあるのが実状」と、間宮さんは懸念する。ピアス持参で来店した若者に、そのピアスは装着不可能だということを説明しても、何とか自分で穴を開けて装着し、トラブルになってしまう子も少なくないそうだ。耳の縁にいくつものピアスホールを自分で開け、穴が避けてギザギザになってしまっている10代女子客もいたという。体に穴を開ける行為であるピアスに抵抗感がない今の10代には、こうした危うさもつきまとう。

NOON(ヌーン)
NOON NOON NOON NOON

■市販のピアッサーを使う10代。今、「イケてる」のは「へそピ」?!

渋谷センター街を歩いていた男女高校生20人に話を聞いた結果、ピアスを開けている子は13人、開けていない子は7人だった。ピアスをしている子13人に「初めてピアスをした」時期を尋ねると、中3が4人、高1が3人、中2が2人、中1が1人、高3が1人、その他2人という結果だった。その他の2人のうち現在高2だというアンナちゃんは「お母さんがハーフで、宗教上の理由から生後6ヶ月のときに開けられた」と話し、17歳のライムちゃんも「2歳のときに親に開けられたらしい」と言っていた。

ピアスを開ける方法については、1番多かった答えが市販の「ピアッサー」を使ったという子で11人、病院で開けた子は2人だった。しかし、初めてのピアスはピアッサーを使ったという子でも、2度目や3度目は安全ピンや画鋲を使って開けたという子が4人ほどいた。現在左耳に4つ、右耳に5つ、鼻ピアスと口ピアスの計11カ所ピアスホールがあるミズホちゃん(17歳)は、「耳は中1のときにノリで、授業中とかに安全ピンで開けた。中学卒業のときに口ピ(口ピアス)を開けて、今は学校も行ってないから半年くらい前に鼻ピ(鼻ピアス)を開けた」と話す。彼女にとって、穴を開けることにはまったく抵抗がないらしく、オシャレにはピアスが必須なのだそうだ。また、カオリちゃん(16歳)は、「1つはピアッサーを使ったけど、もう1つは学校で、放課後友達に安全ピンで開けてもらった。耳の後ろに消しゴムを当てて、安全ピンをグッと刺せば簡単」と言う。左耳に2つ、右耳に1つピアスホールがあったケンジくん(18歳)は「中3の時に彼女がピアスを開けていたのに影響されて、彼女にピアッサーでやってもらった。その後、自分で画鋲を使ってやってみたけど、最初のときよりスゲー痛かった」と話す。

また、「イケてるピアス」について聞くと、4人の女子が「へそピ(へそピアス)はカワイイ!」と答えていた。その他、「ピアスの数は多い方がカッコイイ」(アンナちゃん・高1)、「耳以外のピアスは抵抗ある」(サトミちゃん・高2)、「いかにもたくさんピアスしてるんだぞっていうオーラを出すのはイケてない。さりげなくシンプルにするのがカッコイイ」(ミズホちゃん・17歳)、「でかすぎるピアスはよくない」(ユウイチくん・高3)、「眉毛にピアスしている人はイヤ。鼻ピはかわいいけど、献血ができなくなるからやらない」(カオリちゃん・16歳)、「耳以外はありえない」(ケンジくん・18歳)など、人によって様々な見方がありそうだ。

昔は「親からもらった体に穴を開けるなんてとんでもないこと」という意識が強かった日本だが、グローバル化した現代は他国文化などの影響により、10代を含む若年層にとって、今やピアスはファッションとして欠かせなくなっているようだ。しかしそれでも、ボディピアスに関しては今の10代の中でも賛否両論ある。ファッションと密接に連動するピアスに対する意識は、まだまだ大きく変化していきそうだ。

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