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渋谷センター街に「シブテナ」 不動産店をベースにしたコミュニティー拠点

「シブテナ」の店前に立つ鈴木大輔さん

「シブテナ」の店前に立つ鈴木大輔さん

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 渋谷センター街の一角に9月13日、不動産店をベースにしたコミュニティー拠点「シブテナ」(渋谷区宇田川町)がオープンした。井の頭通りに面した路面で、以前は和雑貨店「渋谷丸荒渡辺」があった場所だ。

さまざまな利用を想定したフレキシブルな店内

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 経営は、1974(昭和49)年創業で同じビルの3階にオフィスを構え不動産の仲介・管理を手掛ける太平洋商事。今年で46年目を迎える。20年ほど前、19歳で入社した次男の鈴木大輔さんは会社勤めの経験が無かったこともあり、当初は「何から手を付けていいか分からなかった」と振り返る。そこで、「まずは人脈づくり」ため地元の渋谷センター商店街振興組合に加入。2020年5月からは常務理事を務めている。美化清掃活動や治安活動はもとより、「宇田川クランクストリート」と名付けられた渋谷センター街の一角にあるL字形の私道で不定期に音楽イベント「シブライブ!」を開くなどして、まちの盛り上げに尽力している。

 2015(平成27)年、父の跡を継ぎ社長に就いた鈴木さんは、さらに渋谷でのネットワークを広げようと、東京青年会議所渋谷区委員会第45代委員長、東京商工会議所渋谷支部青年部副幹事長、渋谷法人会青年部会幹事、一般社団法人渋谷区SDGs協会代表理事を務めるなどして「渋谷人脈」を広げ続けている。

 昨年からのコロナ禍でテナントの撤退が相次ぐものの新規案件は落ち込み、売り上げにも影響した。そうした状況にもかかわらず、昨年7月、同じビル1階の路面にポップアップストア「81(エイティーワン)スペース」を開設した。路面の強みを生かして、渋谷でアピールしたい企業の期間限定イベントショップを呼び込むもくろみだったが、長引くコロナ禍もあり、うまく軌道に乗せることができず、6月でいったんクローズした。

 一方で今春、ウェブマガジン「シブテナ」を開設。渋谷駅周辺の物件情報と併せて、「兆楽」「三千里薬品」といった老舗店主のインタビュー記事などを載せ、「不動産×地域」をテーマに情報発信にも積極的に取り組んでいる。

 鈴木さんは「渋谷駅周辺には、路面にある不動産の実店舗は数軒しかない」ことを背景に、81スペース跡を本業の不動産店に転換することを計画。ただし、店頭のガラス面に物件情報を貼り出す既存の店のあり方とは一線を画し、「かっこいい不動産店」を目指して9月に再起動した。週末は81スペースの流れをくみ、ポップアップスペースとして貸し出す。店内奥に大きなカウンターと3面ディスプレーを配した以外、店内のほとんどをフリースペースにした。店内両サイドの棚にディスプレーする物件情報も可動式とし、フレキシブルに対応できる空間に仕上げた。8月の週末は東京都のPCR検査会場としても貸し出した。

 さらに、地域コミュニティー活動に積極的に取り組む鈴木さんは、店舗空間を「渋谷の人たちが集まれる場所」にも使えないかと画策。不動産店としての営業を終えた平日夜間は、さまざまな地域コミュニティーへの貸し出しも開始。カウンターにはミキサーとプレーヤーも備え、DJも楽しめるようにした。既に渋谷のさまざまなステークホルダーが利用し始めている。

 コロナ禍の渋谷の不動産の動きについて、鈴木さんは「昨年は撤退が相次いだが、撤退後のスペースを求める動きも早く、テナントの動きは活発」だと言う。不動産店、ポップアップスペース、地域コミュニティー拠点の多目的空間を構えた反応について、「シブテナを構えたことで、いろいろな人から『こんなことをやりたい』というオファーがたくさん寄せられるようになった。空間を持つ大切さ、すごさを改めてかみしめた」と話す。さらに、シブテナで構築した新たなフォーマットの拠点を渋谷区内の複数箇所で展開する構想があるほか、全国の不動産店に向けた提案も検討しているという。

 ブランディングの手を緩めない鈴木さんは、渋谷をホームとするBリーグ・サンロッカーズとオフィシャルパートナー契約も結んだ。10月23日の試合から「シブテナ」のブランドがコートに登場する。

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