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長谷部健渋谷区長、元NY交通局長と区内を視察 宮益坂など歩行者優先に

街なかを視察する長谷部健渋谷区長(左)と元NY交通局長のジャネット・サディク=カーンさん(右)

街なかを視察する長谷部健渋谷区長(左)と元NY交通局長のジャネット・サディク=カーンさん(右)

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 長谷部健渋谷区長が5月23日、元米ニューヨーク(NY)交通局長のジャネット・サディク=カーンさんと共に渋谷区内を視察した。

サディク=カーンさんに「SHIBUYAスカジャン」を進呈した

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 サディク=カーンさんはNY交通局時代にタイムズスクエアの広場化などを主導した人物。長谷部区長はかねて「ロンドン・パリ・NYに次ぐまちづくり」を目指し、NYの取り組みにも注目していた中で、サディク=カーンさんが初来日するタイミングで渋谷での取り組みを紹介するとともに、助言を求めた。

 長谷部区長は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け訪日外国人観光客が増えていることや、通行人が多いことなどから、5年をめどに旧大山街道(宮益坂・道玄坂)を歩行者中心の道路として再整備するとともに、歩行者天国の実施を目指している。それに向けて、宮益坂では仮設構造物を置き、車道1車線を歩道にしたり、路上駐車削減に向けて共同荷さばき施設を臨時で設置したりするなどの社会実験なども行っている。

 サディク=カーンさんは歩道と共に自転車専用レーンを作ることも提案し、それぞれの異なる色にペイントすることで明確化することや、取り組みに難色を示す人たちには社会実験などで得たデータを基に説得していくことをアドバイスした。

 視察する中でサディク=カーンさんが熱弁を振るったのは、駅前のスクランブル交差点。「1日延べ50万人が通行するといわれる交差点には大きな可能性がある」と高い関心を寄せつつ、歩行者用空間が少ない点を指摘。5車線ある道路を2車線に減らし、歩行者空間の拡張や自転車専用レーンを作ることを提案したが、長谷部区長は「スクランブル交差点の景色は残したい」と応えた。

 長谷部区長は「ササハタハツ」と命名した笹塚・幡ヶ谷・初台エリアの再整備にも2017年から取り組んでいる。その中で、延長約2.6キロメートルある玉川上水旧水路緑道を、鉄道高架を再利用したNYの公園「ハイライン」のように整備することを目指している。再整備が進む宮下公園では「商業施設を造ることで年間6億円ほどの家賃収入が見込まれている」ことから、その収益を緑道整備に充てる計画であることを説明した。「気合を入れて時間を掛けてやりたい」と2026年ごろを目安に挙げた。

 このほか、サディク=カーンさんはシェアバイクに乗り幡ヶ谷六号通り商店街や区が週末の歩行者天国やイベント開催を目指す都道・水道道路などを視察。渋谷区役所15階の多目的スペース「スペース428」から代々木公園や東京五輪・パラリンピックの競技会場にも使われる国立代々木競技場第一体育館などを見渡すなどした。長谷部区長から、渋谷の街をモチーフにした「SHIBUYAスカジャン」を手渡されると、「とても素晴らしい。アリガトウ」と喜んだ。

 渋谷に必要なこととして「素早く行動に移すこと」を挙げたサディス=カーンさん。「私たちが取り組んできたことは、道路はさまざまな可能性を秘めているということ。巨額のお金を使うことは必要なく、ペイントしたり仮設したりまずアクションすることが大事。NYではそうすることで、できることをどんどん示していった」と振り返る。「素晴らしい財産を持っている渋谷区には、今いる人たちのためにどうあるべきかを追求してほしい。日本は『日出ずる国』といわれるが、渋谷から日が昇っていくような新しい通りが生まれれば」とも。

 長谷部区長も「スピード感」についての話が印象に残ったと言い、「行政では予算を作って議会にかけてというプロセスを踏むが、そういうことをしなくても道路を塗装するなど簡単な社会実験からできるということは、あらためて再確認した」と話し、「渋谷は元々ストリートカルチャーが中心にある街。道でいろいろな人が交わって新しい価値・文化を生み出していくきっかけになれば」と期待を込める。

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